≒ (41作目)「Zシーム」ハーマンハーネス+Wショルダー+ガラス+銘木M5Wお薬手帳20240722
0713 (土) ここまでで色々予定していた小品を終わらせて、大分前から計画していた(いまメモを見返すと最初の部品購入は23/7/22)A4バインダーにとうとう取り掛かるかと思ったが、そこで採用を考えているZシーム(レースの縫い方)をまだ作品としては適用して仕上げたことがない。
夏っぽいお薬手帳が一つあっても良いかなと、34作目で採用したガラスエポキシを使ってM5Wお薬手帳を作ろうと思い立った。もちろんZシームで。
お薬手帳作品の定石として、まず型紙作り、革の切り出し、背革の漉き、圧着、荒仕上げと進めていく。数日これ。
Zシームは縫い幅が広いので、その分革部の幅を広げてそこで縫い幅を吸収しようかと最初は考えたけど、
今作はZシームの初採用なので、毎度おなじみのM5Wお薬手帳の規格で作ってみて縫い方の確認とともに見え方、出来栄えの比較もできるようにしようと決めた。
規格を変えちゃうと過去作との比較がしにくくなっちゃうからね。
但し金属部、今作はガラスエポキシだけどM6Wなどとも共通の幅2㎝にした。M5W規格の初代である35作目の金属部が17ミリなのは発注したサイトの都合だった。
それに引っ張られて惰性で17ミリを発注したので37作目も17ミリになっていたけど、ガラスエポキシは逆にどのサイトで見ても発注可能な最低幅は20ミリだった。
これで切りの良い設計に戻せる。
夕食挟んで革(ダブルショルダー)の切り出しを終えて背革部分の漉きに入る。21時半、1時間半ほどで漉きが終了。過去の数十作の手帳規格でこれほど早く終わるのは初めてだ。
37作で導入したペディナイフがかなり機能する。38作のバッファロー革ではあまり有効ではなかったけど、あの革は硬すぎた。安物過ぎてちゃんと鞣していないようなもの。
ダブルショルダーのようなちゃんとした革で使用するのは今作が初めてでようやく威力を実感した。
ただし、漉きはじめの革の中心部分が削れ過ぎて抉れたようになってしまう危険がある。途中革厚を測りながら慎重に進めていかないと、気が付いたら穴が開いてたということになりかねん。
ダブルショルダーの漉いた部分を均したら表側のハーマンハーネスに取り掛かる。ハーマンの方は一枚革ではなくパッチワークで行くつもりなので粗く漉き部分を決めて漉いていく。
このスピードだともしかして今晩中に圧着まで行くかも。今までだと大体3日ほどかかる作業なのに。
0714 (日) 昨夜は圧着までは届かず。今日は10時過ぎから始めたのだけどもすぐハーマンも3ミリまで漉き終わり昼前には段ボール圧着に入った。
漉いた部分とそうでない部分の厚みの差が大きく、段差があるので段ボール(本と書類入り)の重さ程度ではきっちり圧着できるか心もとない。
パッチワークなので漉いた背革部分が接着出来たら他の直線部分の圧着に入るので同時に修正していく。
昼過ぎから木部の切り出しに入る。縫い方が初めてのものなのでレース穴の数=木部の本数がどうあるべきかまだ明確にはなっていないのだけど、だからこそ、過去作と全く同じつもりで準備する。
二本紐縫いはかなり構造が複雑で捉えにくかったけど、今回のZシームは出来上がりは多重で複雑に見えるけれども、構造自体は今まで採用してきた縫い方の中で一番簡単なように思う。
三つ編みのように表面で折り返したりが一切なく、レース穴をZの文字通り縫い進めて2往復するだけだから。よって木部の本数にあまり工夫は必要ないと思っている。
念のためすべてのレース穴を最初に開けるのではなく、片面を縫いあげるまでやってからもう片面の穴あけを行う。
22時過ぎ、もうシャワーも浴びて明日は祝日なので酒も飲み始めちゃった。結局2本しか木部切り出しは出来なかった。初卸しのブラックウッドが妙に硬かった。
個体差なのか鋸刃が鈍らで限界なのか切り出しに想定以上に時間が掛かった。けど途中途中で圧着作業も進めて革の圧着はほぼ終わった。
後は少しはがれている部分があるので接着剤追加して今夜は寝押し。早めに寝ます。
0715 (月) 祝日。なのに5時過ぎに目が覚めて寝付けない。ゆっくり朝飯を食べて7時過ぎから作業。
寝押ししていた革部の仕上げ。今回別裁ちで一気に行かずカッターで繰り返し手を動かしてはみ出たところを切り落としたので比較的断面が揃っている。
一番目に付く上辺がガタついてるけど他は少し鑢掛けをするだけで滑らかになった。これで基準ができたので、後は数日かけて木部を切り出していく。
現在迷っているのがレースのステッチ同士の幅。針目は木部本数で設置部分の幅を割ればいいだけなんだけど、初めてのZシームで適正幅がやってみないと分からない。
テストでは最初に針目10ミリステッチ幅10ミリに設定して縫ってみたが、狭すぎて詰まってしまって縫えない。途中で断念、論外だった。
次に針目10ミリステッチ幅を倍の20ミリで縫ったのがサンプルとして残してあるもの。縦横揃って良い感じ。
針目とステッチ幅が1対2というのが正解らしいとは分かったのだけど、針目は良いとして、ステッチ幅を2㎝も取ると木部が埋もれてしまう。
過去の手帳規格では毎回革部木部それぞれに5ミリづつ取って、結果10ミリ=1㎝のステッチ幅を取ってきた。
今回は革部側で倍の1㎝取るとして、木部を1㎝では埋もれすぎるので従来通り5ミリで行くか、それだと詰まりすぎるので間をとって7.5ミリ、結果ステッチ幅を1.7㎝で行くか迷っている。
針目はまだ計算していないが、その部分の規格は過去作と同じなので1.4㎝となるはずだ。木部5ミリだと針目とステッチ幅がほぼ1対1なので間延びするかもな。7.5ミリでもその点は大した違いはないか。
いや、やはり木部をレースで隠し過ぎるのは良くない。この部分は過去作を踏襲して木部5ミリで行こう。その代わり革部側で1.5㎝の幅を取ることにする。革部が革で覆われるのは構わない。合計2㎝。
途中家事や食事で抜けながら、21時には7種目まで終了。ここでまだ時間があるので大きい材に取り掛かる。最近オークションで安いけど俺にはデカすぎる材に数回手を出しちゃっている。
積んでて眺めているだけなのでそろそろ割って行こうと思っていた。今作ではまずユーカリを使おう。
家に昔からある両刃鋸で切ってみたらあっという間に刃が入っていく。半分すぎたくらいで鋸の刃が抜けちゃった。柄にヒビが入っていてスカスカ。これは修理しないと使えない。
俺の通常使いの万能のこで引き継いで小さい塊の切り出しが終了。この塊から切り出していく。けどもう23時前なのでそろそろ寝る。
0716 (火) バイト後家事や三宮に紅茶(619番がなくて622番)を買いに行ったりしてから作業開始。ユーカリが思ったより削れなくて鑢掛け荒仕上に夕食前まで掛かる。
リグナムバイタは鋸では切りにくくて鑢では簡単に削れるのだけど、その逆の感じ。ユーカリは比較的楽に大きな材から切り出せたけど、なかなか鑢で削れない。
三宮の帰りにダイソーで220番の耐水ペーパー買ってきて新品に取り換えて、ようやく夕食後まで掛かって粗整形が終わった。ここまでで8本目。
次は黄金樟。ここら辺は定番の樹種があって迷わず作業を進めていくだけ。けどこの後久しぶりにゆっくり風呂に浸かる。
先週末くらいから肌荒れが酷いので「粗塩+クエン酸+重曹」風呂に1時間ほど浸かって肌をすべすべにしてくる。
0718 (木) 昨日は家事の合間にシコシコ木部切り出しを続けた。今朝はバイト前に瘤花梨を荒仕上げ。これで13本。
昨日切り出したオーストラリアンジャラの内部の腐敗部分がデカすぎる。前に固めていたレジン部分を全部外して、鉄ブラシなどで削りに削ったうえで今日一日日光に当てて乾燥させる。
今日だけで足りないなら数日干してみてちゃんと乾いたらレジンで固めて使う予定。
0719 (金) 木部切り出しを進めて、バイトと家事が終わった夕方には17種目の青朴に取り掛かる。そろそろ残りの樹種を何ににするか迷う頃。
0720 (土) お母さんが信用金庫の懸賞に応募して当たったチケットで今日は甲子園に野球観戦に行く予定だったのだけど、朝になって止めた。
熱中症とコロナのリスクがデカすぎる。何よりお母さんに朝聞いたら何のことか覚えていなかった。大して楽しみにしてたわけでもないようなので断念した。
その代わり、一応イベント中止の代替としてお母さんの好きなちらし寿司を作った。昼前にはパンの仕込み、昼食後はちらし寿司づくりで、作業開始は15時頃から。
レジン補正していたオーストラリアンジャラの粗整形がすぐ終わる。良い感じに仕上がった。残るは2種。迷ったが老紅木とオリーブウッドに決める。しこしこ切り出しを進める。
18時に切り出し終了。すぐに穴あけに入る。手帳規格では初めてボール盤を使う。すべて2本通しなので5ミリ径を開けてしまおうかと一瞬思ったが無茶はしないほうが良い。
過去作での経験から決まった2本通しは4.5ミリという規格は守ることにする。さて何本割れるか。
夕食を挟んで22時前には木部穴あけ終了。割れる気配一切なし。ボール盤は偉大だ。4.5ミリで開けているので穴拡げという作業が今作では必要ない。
このまま木部の最終仕上げに入る前、ボール盤を片付ける前に金属部=ガラスエポキシの穴あけをやってしまう。
まず穴位置の確定をしなければいけない。ステッチ幅を木部は5ミリに決めてその位置に4.5ミリの穴を開けている。
0715 (月)の時点では革部に15ミリのステッチ幅を取り、合計でステッチ幅を2㎝とするつもりだったが、型紙の位置が切りが良いのと革部のレースで覆われていない部分を1㎝は取りたいと思ったので革部のステッチ幅は1.25㎝=12.5ミリとする。
合計1.75㎝=17.5ミリが実際のステッチ幅。それに合わせてガラスエポキシに穴を開ける。
開け終わったらシャワー浴びて酒を飲みながら木部仕上げを進めよう。
0721 (日) 昼飯前に木部の最終仕上げ、ガラスエポキシの最終仕上げまですべて終了。残すは革部の穴あけ。これもボール盤だと六角シャンクが嵌るのでいきなり4.5ミリ径で開けられる。穴拡げの必要ない。
それが終わればレース縫いだけど、革部に取り掛かる前に木部の並び順を確定する。少し迷ったがすぐ決まる。今作は木部、樹種にはあまりこだわりがない。
こだわりがないというより初卸しの良い材がありすぎてどれが良いというようには選べない。なので色味で決めた。記録して革部作業開始。
レースは前々作でかなり余分に切ってあるのでレース切りの必要はないはず。Zシームは初めてなので使用量が分からない。足りなくなったら追加で切る。
今日中にレース縫いは始められるだろう。
ちんたら革部の穴あけと仕上げを進めてたら時間が掛かり過ぎた。18時過ぎからようやくレース縫い開始。
縫う方向は別にどちらでも良いはず。レースの重なり方に違いが出るだけなんだけど、木部を留める方向が「内から外」縫いだと下=裏側=表紙の内側から留めることになるのでばらけやすい。
なので「外から内」で縫っていくことにする。
縫い進めて行って分かったこと。最初の往路は1目飛ばしなので木部がぶらぶらしてて作業しにくい。
そして致命的な問題が発覚した。このゼットシームは裏の部分は木部と革部の間をすべて2重に縫い付けるから安定すると思い採用したのだけど、縦方向には裏側は一切縫わない。
まさにZシームの名前の由来通り、表側を斜めに繋いでいって裏面では横一直性で縫っていく。よって革部と木部の接続には問題は無いけれど、金属部=ガラスエポキシと革部及び金属部が裏面では全く縫い付けられていない。
表側ではちゃんと縫い付けられているが、裏面がバラバラだ。対策としてはここだけ縦方向に余分にレースを回して縫い付けるしかないと思う。
後では難しいので少し縫ったものを解いてガラスエポキシと革部木部の該当部分の穴を3本通し、6ミリまで拡げることにする。
0722 (月) 朝イチ、バイト前に表表紙終了。バイト後に裏表紙に入る。要領が分かったので以後は早い。
23時前にレース縫い終了。途中レース継ぎの接着待ちが何回かあってシャワー浴びて来たりもしたので大分時間に余裕をもっての完成。
感想としてはZシームはかなり有用。初めてのZシーム、表表紙を縫うときは一目飛ばしなので木部がバラけるのを締め付けながら縫っていたけど、裏表紙は最初の一往復はバラけるのも気にせずゆるゆるのまま縫いあげた。
結果最終形は表表紙と裏表紙の見た目にも締まり具合=動かしてみた時の安定度にも差は無いので、かなり縫うときの作業の自由度が高い。
自由度という点では今回1辺のステッチ数は偶数だったのに対してテストで縫った時は奇数だったけれど殆ど製作には影響がなかった。唯一往復の折り返し部分の形が違うだけで、それでも縫い方に変わりはなかった。
二本紐縫いはもちろん、手慣れている三つ編みと比べても作業のしやすさは上で、仕上がりのボリュームも剛性感も一番上だ。ボリュームと剛性が強いのは当然で、縫い長1㎝当たりの使用レースが15㎝で、今までの各種縫い方の1.5倍レースを使用している。
Zシームに唯一注文を付けるとしたら今作のM5W手帳という規格では少し主張が強すぎる。メインのアイコンが革レースになってしまった感じ。
その点、今作をテスト制作としていよいよ次はA4バインダーに取り掛かるが、そのサイズならこのレースのボリューム感で丁度いいのではないか。
以上、今作終了。後は原価計算が終わったら寝る。明日からはA4バインダーに取り掛かる。
Zシームの参考動画を上に上げているが、良くこんな動画が見つかったと思う。動画作者はZシームの動画ばかり数本上げていて、どれもただひたすらZシームを縫っているだけの動画。
「nels_canada」(Youtubeチャンネル)
俺にはすごく参考になったが、他には誰の参考になるのかが不思議な動画だ。Zシーム動画を2年前に数本上げてからは休眠してたようだが、最近また復活しているようで「Tブレイディング」という別の縫い方の動画を複数上げているようだ。
また新しい縫い方を習得できるかもしれない。
今作はボール盤の導入もデカかった。この規格が10日で完成なんて初めてのことだし、何より手ドリルでの穴拡げが無くなって木部の割れの心配がなくなった。気兼ねなく大き目の穴を開けられるのでレース縫いも抵抗が少ない。
結果、縫い作業中のレースの荒れもかなり減った。ボール盤のおかげで全体的に、劇的と言って良いほど作業のスピードと精度が上がった。
次作ではまだ関係ないがボール盤を購入したもう一つの目的、ダマスカス鋼の加工も近いうちに挑戦してみよう。
原材料費総額 ¥12,955.42
作業日数 10.0日
重量
本体 770.0g
クリップボード 62.0g
総重量 832.0g